





障害者手帳3級でも障害年金2級になることがあります|統合失調症で障害基礎年金が決定した事例
障害年金のご相談を受けていると、「障害者手帳の等級」と「障害年金の等級」を同じものだと思っている方が少なくありません。
たとえば、障害者手帳が3級だから、障害年金も3級にしかならない。
障害基礎年金には3級がないから、自分は障害年金をもらえない。
このように考えて、障害年金の請求をあきらめてしまっている方がいらっしゃいます。
しかし、これはとても大きな誤解です。
障害者手帳と障害年金は、名前が似ているため混同されやすいのですが、まったく別の制度です。
そして、それぞれの制度で使われる「障害等級」も、必ず一致するわけではありません。
障害者手帳が3級であっても、障害年金では2級と認定されることがあります。
今回は、精神障害者保健福祉手帳3級をお持ちだった30代の方が、統合失調症により障害等級2級の障害基礎年金に認定された事例をご紹介します。
【障害者手帳と障害年金は別の制度です】
まず最初に、障害者手帳と障害年金の違いを整理しておきます。
障害者手帳は、障害のある方が福祉サービスや各種支援を受けやすくするための制度です。
精神疾患の場合には、精神障害者保健福祉手帳があります。
手帳を持つことで、税金の控除、公共料金や交通機関の割引、障害者雇用枠での就労、自治体独自の支援などにつながる場合があります。
一方、障害年金は、病気やけがによって生活や仕事に制限が出ている方に、年金としてお金が支給される制度です。
障害者手帳が「福祉サービスを利用しやすくするための制度」であるのに対し、障害年金は「生活を経済的に支えるための制度」と考えると、違いがわかりやすいかもしれません。
制度が違うため、申請先も、目的も、審査の基準も異なります。
そのため、障害者手帳の等級がそのまま障害年金の等級になるわけではありません。
障害者手帳が3級でも、障害年金で2級に認定されることはあります。
反対に、障害者手帳を持っているからといって、必ず障害年金が受け取れるというものでもありません。
大切なのは、障害年金の認定基準に照らして、現在の病状や日常生活、就労状況がどのような状態にあるかです。
【高校生の頃に統合失調症を発症】
今回ご相談いただいたのは、30代の当事者の方でした。
当事者の方は、高校生の頃に統合失調症を発症されました。
本来であれば、学校生活や友人関係、進路のことなど、将来に向けて多くのことを経験していく時期です。
しかし、発症後は精神科での治療が必要となり、体調や症状の影響で学校を欠席することもありました。
それでも、ご本人は療養を続けながら、何とか高校を卒業されました。
その後、大学に進学することもできました。
ご本人にとっても、ご家族にとっても、大学進学は一つの大きな希望だったと思います。
しかし、大学生活の中で症状が悪化してしまいました。
授業への出席、友人関係、生活リズム、課題への対応など、大学生活にはさまざまな負担があります。
症状の波がある中で、それらを継続していくことは難しく、最終的には大学を中退することになりました。
発症から現在に至るまで、10年以上にわたり精神科治療を継続されていました。
【アルバイトはできても長く続かなかった日々】
大学を中退された後も、ご本人は社会とのつながりを持とうとされていました。
状態が比較的落ち着いている時期には、アルバイト程度の就労ができていたこともありました。
しかし、症状には波がありました。
一時的に働くことができても、体調が崩れると勤務を続けることが難しくなってしまいます。
職場での人間関係、決められた時間に出勤すること、仕事上の指示を理解して対応すること、緊張感のある環境に身を置くこと。
こうしたことが積み重なると、精神的な負担が大きくなり、症状が悪化してしまうことがありました。
その結果、退職と再就職を繰り返すようになりました。
「今度こそは続けたい」と思って働き始めても、症状の波により長くは続けられない。
このような経験を何度も重ねるうちに、ご本人の自信も少しずつ失われていったのではないかと思います。
就労が安定しない状態は、収入面だけでなく、気持ちの面にも大きな影響を与えます。
周囲から見れば「少し働けていた時期がある」と見えるかもしれません。
しかし、障害年金の請求で大切なのは、働いたことがあるかどうかだけではありません。
その仕事を安定して継続できていたのか、症状が悪化して退職に至ったのかといった経過も、とても重要です。
【手帳3級だから障害基礎年金は無理だと思っていた】
ご本人は、日常生活もままならず、就労もできない状態の中で、障害年金の請求を検討したことがありました。
しかし、その時に大きな壁になったのが、障害者手帳の等級でした。
ご本人が保有されていた精神障害者保健福祉手帳の障害等級は3級でした。
一方、ご本人は障害基礎年金の対象者でした。
障害基礎年金は、障害等級が1級または2級に該当した場合に支給される制度です。
障害基礎年金には3級がありません。
そのため、ご本人は「自分の障害者手帳は3級だから、障害基礎年金はもらえない」と思い込んでしまっていました。
この誤解は、非常に多いものです。
「手帳が3級だから、年金も3級」
「基礎年金には3級がないから、自分は対象外」
「請求してもどうせ通らない」
そう考えてしまうと、請求の可能性を確認する前に、制度の入口であきらめてしまうことになります。
しかし、障害者手帳の3級と、障害年金の3級は同じ意味ではありません。
審査する制度も、見ているポイントも異なります。
障害年金では、手帳の等級だけで判断されるのではなく、病状、治療経過、日常生活能力、就労状況などを総合的に見て判断されます。
【福祉事業所を通してご相談につながりました】
その後も症状は改善せず、就労も難しい状態が続いていました。
生活面でも不安が大きくなっていく中で、ご本人は福祉事業所を通して当職につながりました。
ご相談を伺う中で、まず確認したのは、障害者手帳の等級ではありません。
発症時期、初診日、これまでの治療経過、通院状況、服薬の状況、日常生活の状態、就労が続かなかった理由などです。
高校生の頃から統合失調症を発症し、10年以上にわたり治療を継続していること。
療養しながら高校を卒業し、大学にも進学したものの、症状の悪化により中退していること。
その後もアルバイト程度の就労はできた時期があったものの、症状の波により長続きせず、退職と再就職を繰り返していること。
現在は日常生活にも支障があり、安定した就労ができる状態ではないこと。
こうした経過を丁寧に整理していきました。
そして、障害者手帳の等級が3級であっても、障害年金の認定基準上、2級に該当する可能性があると判断し、請求手続きを進めることになりました。
【障害基礎年金2級が決定しました】
手続きを進めた結果、ご本人は無事に障害等級2級の障害基礎年金に認定されました。
これは、障害者手帳が3級であっても、障害年金では2級に認定されることがあるという、とても大切な事例です。
今回のポイントは、手帳の等級だけで判断しなかったことです。
もしご本人が「手帳3級だから無理」と思い込んだまま、誰にも相談しなければ、障害年金を受け取る機会を失っていたかもしれません。
もちろん、すべての方が同じように認定されるわけではありません。
障害年金は、病名だけで決まるものではなく、日常生活や仕事にどの程度の支障があるかを見て判断されます。
しかし、だからこそ、手帳の等級だけで自分の可能性を決めつける必要はありません。
今回のように、障害者手帳では3級であっても、実際の生活状況や就労状況を確認すると、障害基礎年金2級に該当する場合があります。
【障害年金では生活と就労の実態が重要です】
精神疾患による障害年金では、診断名だけでなく、日常生活能力や就労状況がとても重要になります。
日常生活の身の回りのことがどの程度できているのか。
一人でできるのか。
家族や支援者の援助があって何とかできているのか。
調子が良い時だけできるのか。
継続して安定してできているのか。
このような点を丁寧に見ていく必要があります。
就労についても同じです。
少し働いたことがあるから、障害年金は無理というわけではありません。
短時間のアルバイトをしていた時期があっても、症状の波で長く続かなかった場合や欠勤や早退が多かった場合などは、実際には安定した就労とはいえないこともあります。
障害年金では、「働いたかどうか」だけではなく、「働き続けられる状態だったのか」が大切です。
今回の当事者の方も、アルバイト程度の就労ができた時期はありましたが、症状の波によって長く続けることができませんでした。
このような経過をきちんと整理することで、障害年金の審査において、ご本人の状態が伝わりやすくなります。
【手帳の等級だけであきらめないでください】
障害者手帳と障害年金は、どちらも「障害」という言葉を使うため、同じもののように感じられるかもしれません。
しかし、実際には別の制度です。
障害者手帳は福祉サービスや支援につながる制度であり、障害年金は生活を経済的に支える制度です。
そして、それぞれの等級は必ず一致するわけではありません。
障害者手帳が3級だから、障害基礎年金は絶対にもらえない。
そのように考えてしまうのは、とてももったいないことです。
特に、精神疾患で長く治療を続けている方、就労が安定しない方、日常生活に支援が必要な方は、手帳の等級だけで判断せず、障害年金の可能性を確認してみてください。
「自分は手帳3級だから無理」と思っていた方が、実際には障害基礎年金2級に該当するケースもあります。
知っていれば受け取れたかもしれない制度を、誤解のためにあきらめてしまうことは、とても残念なことです。
【制度の違いを知ることが最初の一歩です】
障害年金の手続きは、わかりにくい部分が多い制度です。
初診日、保険料納付要件、診断書、病歴・就労状況等申立書、障害認定日、現在の状態など、確認すべきことがたくさんあります。
そのうえ、障害者手帳の等級との違いもあるため、ご本人やご家族だけで判断しようとすると、途中で混乱してしまうことがあります。
しかし、最初に知っていただきたいことは、とてもシンプルです。
障害者手帳と障害年金は別の制度です。
障害者手帳の等級と、障害年金の等級は、必ず同じではありません。
障害者手帳が3級でも、障害年金では2級に認定されることがあります。
このことを知っているだけで、あきらめずに相談できる方が増えるのではないかと思います。
今回の事例が、障害者手帳の等級を理由に障害年金をあきらめている方にとって、「一度確認してみよう」と思えるきっかけになれば幸いです。
生活や仕事に大きな支障があるにもかかわらず、手帳の等級だけで判断してしまっている方は、ぜひ一度、障害年金の可能性を確認してみてくださいね。
【こちらのページもご参考まで】https://syougainenkin.com/lp/01/
社会保険労務士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
石井 要美
2026/06/05
- 障害年金社労士ブログ

