





障害者手帳1級でも障害年金が不支給に?診断書の選び方で結果が変わった事例
【障害者手帳1級でも障害年金が不支給に?診断書の選び方で結果が変わった事例】
障害年金のご相談を受けていると、「障害者手帳の等級」と「障害年金の等級」を同じものだと思っている方が少なくありません。
たとえば、障害者手帳が1級であれば、障害年金も当然1級になる。
障害者手帳を持っていれば、障害年金も必ず受け取れる。
このように考えている方は、意外と多くいらっしゃいます。
しかし、障害者手帳と障害年金は別の制度です。
制度の目的も、審査の基準も、必要となる書類も異なります。
そのため、障害者手帳が1級であっても、障害年金が必ず認定されるとは限りません。
また、障害年金の請求では、どの診断書を使うかが非常に重要です。
今回は、障害者手帳は1級であったにもかかわらず、一度は障害年金が不支給となり、その後、診断書の種類を見直して再請求した結果、障害基礎年金1級の永久認定を受けることができた事例をご紹介します。
【障害者手帳1級なのに障害年金が不支給に】
今回の当事者の方は、先天性筋無力症候群の方でした。
ご相談は、親御様からいただきました。
親御様は、すでに一度、障害年金のお手続きをされていました。
当事者の方は障害者手帳をお持ちで、その等級は1級でした。
障害者手帳が1級というと、多くの方は「障害年金も当然認められるのではないか」と思われるかもしれません。
親御様も、障害者手帳が1級であることから、障害年金の請求も認められる可能性が高いと考えておられたと思います。
ところが、結果は不支給でした。
障害者手帳1級であるにもかかわらず、障害年金では等級に該当しないと判断されてしまったのです。
親御様にとっては、とても驚かれたことと思います。
「手帳は1級なのに、なぜ年金は認められないのか」
「状態は重いはずなのに、どうして不支給なのか」
このような疑問や不安を抱えた状態で、当職へご相談いただきました。
【手帳の障害名を参考に診断書を選んでいた】
詳しくお話を伺うと、不支給となった大きな原因の一つは、診断書の種類にありました。
当事者の方が保有されていた障害者手帳は、「呼吸器機能障害1級」でした。
そのため、親御様は障害年金の請求時にも、障害者手帳の内容を参考にして、診断書の種類を「呼吸器疾患の障害用」として選択されていました。
一見すると、自然な判断のように思えます。
障害者手帳が呼吸器機能障害で認定されているのであれば、障害年金でも呼吸器の診断書を使えばよいのではないか。
そう考えるのは、無理のないことです。
しかし、ここに障害年金の難しさがあります。
障害者手帳でどの障害名がついているかと、障害年金でどの診断書を使うべきかは、必ずしも一致しません。
障害年金では、実際にどの機能にどのような障害があり、日常生活にどの程度の支障が出ているのかを、障害年金の認定基準に沿って判断します。
そのため、障害者手帳の障害名だけを参考にして診断書を選ぶと、本来評価されるべき障害状態が十分に伝わらないことがあります。
【呼吸器疾患の認定基準では該当しませんでした】
親御様が最初に提出されたのは、「呼吸器疾患の障害用」の診断書でした。
しかし、障害年金の呼吸器疾患の認定基準に照らすと、当事者の方の状態は等級に該当しないと判断されてしまいました。
ここで大切なのは、「状態が軽かった」ということではありません。
障害者手帳では呼吸器機能障害1級とされていたとしても、障害年金の呼吸器疾患として評価した場合には、認定基準に該当しなかったということです。
障害者手帳では重い等級であっても、障害年金の同じ分野の認定基準にそのまま当てはまるとは限りません。
また、診断書の種類が実態に合っていない場合、日常生活で本当に困っている部分が十分に反映されないことがあります。
今回のケースでも、呼吸器の数値や呼吸器疾患としての状態だけでは、障害年金上の等級に該当することを示すのが難しい状況でした。
つまり、不支給になったからといって、当事者の方が障害年金の対象にならないということではありませんでした。
適切な視点で障害状態を見直す必要があったのです。
【実際の障害状態を確認すると肢体の障害が中心でした】
当職が改めて当事者の方の状態を確認したところ、障害年金の請求において中心的に評価すべきなのは、呼吸器ではなく肢体の障害であると考えられました。
先天性筋無力症候群により、身体の動きや筋力、日常生活動作に大きな制限がありました。
障害年金では、病名だけで診断書を選ぶわけではありません。
また、障害者手帳の障害名だけで診断書を決めるわけでもありません。
現在の状態として、どの機能障害が日常生活に最も大きな影響を与えているのか。
どの診断書を使えば、その障害状態を最も正確に伝えられるのか。
この視点がとても大切です。
今回のケースでは、「呼吸器機能障害1級」という手帳の情報だけを見ると、呼吸器疾患用の診断書を選びたくなります。
しかし、障害年金の認定で本当に評価されるべき状態は、肢体の障害として整理する方が適切でした。
そこで、「肢体の障害用」の診断書を用いて再請求を行うことにしました。
【肢体の障害用診断書で再請求し1級永久認定へ】
再請求では、当事者の方の身体の状態を丁寧に整理しました。
どのような動作が難しいのか。
日常生活の中で、どの程度の援助が必要なのか。
こうした点を確認したうえで、障害年金の請求に適した形で医師に診断書を作成していただきました。
その結果、障害等級1級の障害基礎年金が認定されました。
しかも、永久認定でした。
一度目の請求では不支給であったにもかかわらず、診断書の種類を見直し、障害状態を適切に整理して再請求したことで、結果が大きく変わったのです。
この事例は、障害年金の請求において、診断書の選択がいかに重要であるかを示しています。
もちろん、診断書を変えれば必ず認定されるという意味ではありません。
しかし、実際の障害状態に合っていない診断書を提出してしまうと、本来認定される可能性がある方でも、不支給となってしまうことがあります。
【障害年金用の診断書は8種類あります】
障害年金の請求では、診断書の提出が必須です。
そして、障害年金用の診断書には8種類あります。
障害の状態によって、どの診断書を使うかが変わります。
また、場合によっては、複数の診断書を組み合わせて請求することもあります。
たとえば、同じ病気であっても、主に肢体に障害が出ているのか、呼吸器に障害が出ているのか、内部疾患として評価すべきなのかによって、選ぶ診断書が変わることがあります。
また、複数の障害がある場合には、それぞれの状態を適切に伝えるために、複数の診断書が必要になることもあります。
この診断書の選択は、障害年金の請求において非常に重要なポイントです。
「病名は何か」だけで判断するのではなく、「実際にどの機能に支障があり、どの診断書ならその状態を正しく表せるか」を考える必要があります。
【障害者手帳の等級だけで判断しないことが大切です】
今回の事例でお伝えしたい一番大切なことは、障害者手帳の等級だけで障害年金を判断してはいけないということです。
障害者手帳と障害年金は別制度です。
障害者手帳の等級と障害年金の等級は、一致するとは限りません。
障害者手帳が1級だからといって、障害年金も必ず1級になるわけではありません。
反対に、障害者手帳の等級が軽くても、障害年金では上位等級に認定されることもあります。
また、手帳の障害名をそのまま参考にして障害年金の診断書を選んでしまうと、今回のように、実際の障害状態が十分に伝わらない場合があります。
大切なのは、障害者手帳の情報を参考にしつつも、それだけで決めつけないことです。
障害年金では、障害年金の認定基準に沿って、現在の状態を見ていく必要があります。
そのうえで、どの診断書を使うのが最も適切なのかを判断することが大切です。
【不支給でも見直せる場合があります】
一度、障害年金が不支給になってしまうと、「もう無理なのだ」と思ってしまう方が多いです。
特に、障害者手帳が1級であるにもかかわらず障害年金が不支給となった場合、納得できない気持ちや、制度への不信感を抱くこともあると思います。
しかし、不支給になった理由を丁寧に確認すると、再請求や不服申立てを検討できる場合があります。
今回のように、診断書の種類が実際の障害状態に合っていなかったケースでは、適切な診断書を選び直すことで、結果が変わる可能性があります。
もちろん、すべての不支給が覆るわけではありません。
しかし、「不支給だったから終わり」とすぐにあきらめるのではなく、なぜ不支給になったのかを確認することが大切です。
診断書の種類は適切だったか。
日常生活の状態は十分に伝わっていたか。
障害の中心となる部分が正しく評価されていたか。
こうした点を見直すことで、次の可能性が見えてくることがあります。
【診断書選びに迷ったら早めに確認を】
障害年金の手続きは、診断書の種類をどれにするか、どの障害を中心に請求するか、複数の診断書が必要かどうかなどは、判断が難しい部分です。
特に、複数の障害がある場合や、病名と障害の現れ方が一致しにくい場合には注意が必要です。
今回のように、障害者手帳では呼吸器機能障害として認定されていても、障害年金では肢体の障害として整理した方が適切な場合もあります。
制度の名称や等級だけを見るのではなく、実際の生活の中で何に困っているのか、どの機能障害が生活に大きな影響を与えているのかを確認することが大切です。
障害年金は、病気や障害によって生活や仕事に制限がある方を支えるための制度です。
だからこそ、その状態が正しく伝わる形で請求する必要があります。
診断書の選択を誤ると、本来伝えるべき障害状態が審査に届かないことがあります。
障害者手帳の等級が重いから大丈夫。
手帳の障害名と同じ診断書を選べばよい。
そう思って手続きを進める前に、障害年金としてどのように状態を整理するべきか、一度確認してみることをおすすめします。
【こちらのページもご参考まで】https://syougainenkin.com/lp/01/
社会保険労務士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
石井 要美
2026/06/08
- 障害年金社労士ブログ

