





がんで障害年金2級が決定した事例|人工肛門造設だけでは3級でも認定された理由
【がんで障害年金2級が決定した事例|人工肛門造設だけでは3級でも認定された理由】
がんで治療を続けている方の中には、「障害年金は自分には関係ない」と思っている方が少なくありません。
特に、がんの場合は、治療が続いていても外見からはつらさが伝わりにくいことがあります。
抗がん剤治療を受けながら、強い倦怠感や微熱、吐き気、食欲低下、体力の低下などを抱えていても、「治療中だから仕方がない」「まだ自分で動けるから障害年金は無理だろう」と考えてしまう方も多いのではないでしょうか。
しかし、障害年金におけるがんの認定では、がんそのものによる障害だけでなく、がんに対する治療の結果として起こる全身衰弱や機能障害も認定の対象になります。
今回ご紹介するのは、大腸がんステージⅣと診断され、人工肛門を造設した方が、最終的に障害等級2級の障害基礎年金に認定された事例です。
ポイントは、人工肛門を造設したことだけを見れば原則として3級相当とされるところ、抗がん剤治療による全身状態や日常生活の制限を丁寧に確認した結果、2級の認定につながったという点です。
【大腸がんステージⅣと診断された30代のご相談者様】
ご相談者様は30代の方でした。
大腸がんのステージⅣと診断された時点で、病状はかなり進行していました。そのため、大腸がんそのものを取り除く手術は難しい状態でした。
治療としては、人工肛門を造設し、抗がん剤治療を継続して受けることになりました。
30代という年齢を考えると、本来であれば仕事や家庭、これからの生活設計を考えていく時期です。そのような中で、突然がんと診断され、しかもステージⅣであると告げられることは、ご本人にとってもご家族にとっても、非常に大きな衝撃だったと思います。
さらに、人工肛門の造設により、日常生活の中で常に排泄管理を意識しなければならなくなりました。
ストーマ装具の交換、漏れや皮膚トラブルへの不安、外出時の心配、人目が気になる場面、体調が悪い中での管理など、身体的な負担だけでなく、精神的な負担も大きいものです。
ただし、障害年金の制度上、人工肛門を造設したという事実だけで、すべての方が障害年金を受け取れるわけではありません。
ここに、今回の事例の大切なポイントがあります。
【人工肛門造設は原則3級、でも障害基礎年金には3級がありません】
障害認定基準では、人工肛門を造設したものは、原則として障害等級3級と認定されることになっています。
ここで注意が必要なのは、障害等級3級があるのは、原則として障害厚生年金の場合だということです。
障害年金には、大きく分けて障害基礎年金と障害厚生年金があります。
初診日に国民年金に加入していた方や、20歳前に初診日がある方などは、障害基礎年金の対象になります。障害基礎年金には1級と2級はありますが、3級はありません。
一方、初診日に厚生年金に加入していた方は、障害厚生年金の対象となり、1級、2級、3級があります。
つまり、人工肛門造設だけで3級相当と判断される場合、初診日に厚生年金加入中であれば障害厚生年金3級の可能性があります。
しかし、障害基礎年金の対象者の場合は、3級に該当しても受給につながらないことがあります。
今回のご相談者様も、人工肛門を造設したことだけを理由に考えると、障害基礎年金の受給は難しい可能性がありました。
そこで大切になるのが、「人工肛門を造設したかどうか」だけではなく、がんそのものや抗がん剤治療によって、日常生活がどの程度制限されているのかを丁寧に確認することでした。
【抗がん剤治療による強い倦怠感と微熱】
ご相談者様の身体の状態について詳しくお話を伺うと、人工肛門の管理だけでは説明しきれない、大きな生活上の困難がありました。
抗がん剤治療による全身の著しい倦怠感があり、日常的に身体が重く、少し動くだけでも強い疲労を感じる状態でした。
また、微熱が続くこともあり、体調が安定しませんでした。
ご本人としては「動かなければ」と思っていても、身体がついていかない。少し家事をしただけで横にならなければならない。外出の予定を立てても、当日の体調によっては動けない。
そのような日が続いていました。
がんの障害認定では、一般状態区分という考え方が重要になります。
一般状態区分とは、検査数値だけでは見えにくい「実際にどのくらい動けるのか」「どのくらい横になっているのか」「身の回りのことがどこまでできるのか」といった日常生活の状態を確認するための大切な視点です。
今回のご相談者様は、抗がん剤治療の影響による強い倦怠感や微熱により、日常生活に大きな制限がありました。
この状態を、単なる「治療中の一時的なつらさ」としてではなく、障害年金の認定上、きちんと評価されるべき生活状況として整理することが必要でした。
【がんは治療の副作用も認定対象になります】
がんの障害年金で誤解されやすい点があります。
それは、「がんそのものがどれだけ進行しているか」だけで判断されるわけではないということです。
もちろん、がんの種類、ステージ、転移の有無、治療経過、検査結果はとても重要です。
しかし、それだけではありません。
抗がん剤治療、放射線治療、手術などによって起こる全身衰弱や機能障害も、障害年金の認定対象になります。
このような状態は、外から見ただけでは伝わりにくいものです。
しかし、ご本人の生活にとっては非常に大きな制限です。
今回の事例では、人工肛門造設という目に見える障害だけに注目するのではなく、抗がん剤治療による全身状態、家事や外出、身の回りのことにどの程度支障があるのかを丁寧に整理しました。
その結果、障害等級2級の障害基礎年金として認定されました。
【障害基礎年金2級が認定された理由】
今回のご相談者様は、人工肛門を造設していました。
しかし、人工肛門造設のみで考えると、原則として3級相当です。障害基礎年金には3級がないため、その点だけでは受給に結びつかない可能性がありました。
それでも2級が認定されたのは、がんの進行状況、抗がん剤治療の継続、全身の著しい倦怠感、微熱、日常生活の大きな制限が総合的に評価されたためです。
障害年金の請求では、「診断名」だけで結果が決まるわけではありません。
同じ大腸がんであっても、治療内容、転移の有無、体力の低下、倦怠感の程度、日常生活の状況、就労の可否によって、認定される等級は変わります。
また、同じ人工肛門造設であっても、初診日に厚生年金だったのか、国民年金だったのかによって、受け取れる可能性が変わることもあります。
だからこそ、「人工肛門だから3級」「障害基礎年金だから無理」と早い段階で決めつけないことが大切です。
本当に確認すべきなのは、現在の身体の状態と生活の実態です。
【診断書に生活の実態を反映してもらうことが大切です】
がんで障害年金を請求する場合、診断書の内容はとても重要です。
ただし、診断書は医師が医学的な視点から作成する書類です。日常生活の細かな困りごとは、ご本人から伝えなければ、十分に書かれないこともあります。
障害年金では、病名や治療内容だけでなく、日常生活でどのような制限があるのかが重要です。
そのため、診断書を依頼する前に、次のような点を整理しておくことが大切です。
抗がん剤治療の頻度。治療後にどのくらい体調が悪くなるのか。1か月のうち動けない日の割合。日常生活にどの程度支障があるのか。仕事ができる状態なのか、就労を続けることが難しい状態なのか。
これらを整理することで、医師にも実際の生活状況が伝わりやすくなります。
【がん治療中で働けない方へ】
がん治療中の方は、治療そのものだけでなく、これからの生活や収入への不安も抱えています。
「治療費はどうなるのか」
「仕事に戻れるのか」
「家族に負担をかけてしまうのではないか」
「この体調で生活していけるのか」
このような不安を抱えながら、日々治療を続けることは、本当に大変なことです。
障害年金は、病気やけがによって生活や仕事に制限が出ている方を支える公的な制度です。
がんの場合も、対象となります。
特に、抗がん剤治療による強い倦怠感、微熱、全身衰弱、仕事を続けることが難しい状態がある場合は、障害年金の可能性を確認してみる価値があります。
人工肛門を造設した方についても、「3級だから障害基礎年金では無理」とすぐに諦める必要はありません。
がんそのものの状態や治療による全身状態によっては、2級以上に該当する可能性があります。
大切なのは、制度の一部分だけを見て判断しないことです。
そして、ご自身のつらさを「治療中だから仕方ない」と片づけず、日常生活にどのような影響が出ているのかを丁寧に整理することです。
今回の事例が、がん治療中で仕事や生活に不安を抱えている方にとって、「障害年金という選択肢を知るきっかけ」になれば幸いです。
【こちらのページもご参考まで】https://syougainenkin.com/lp/01/
社会保険労務士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
石井 要美
2026/06/01
- 障害年金社労士ブログ

