





106万円の壁撤廃で働き方はどう変わる?障害年金受給者が知っておきたい社会保険加入の話
【106万円の壁撤廃で働き方はどう変わる?】
最近、「106万円の壁」という言葉を耳にする機会が増えています。
パートや短時間勤務で働く方にとって、年収が一定額を超えると社会保険に加入することになるため、「働く時間を増やすと手取りが減ってしまうのではないか」と不安に感じる方も多いと思います。
令和7年の年金制度改正により、短時間労働者の社会保険加入について、いわゆる106万円の壁と呼ばれていた賃金要件は撤廃される方向となっています。
今後は、週20時間以上働く方について、勤務先の規模にかかわらず、社会保険加入の対象が広がっていく流れになります。
この話題は、障害年金を受けている方や、ご家族からもよくご質問をいただきます。
「働く時間を増やしたら、障害年金は止まりますか」
「社会保険に加入したら、年金を受けられなくなりますか」
「障害者雇用で働いている場合は、どう考えればよいですか」
今回は、106万円の壁撤廃と障害年金受給者の働き方について、できるだけやさしく整理していきます。
【106万円の壁とは何だったのか】
これまで短時間で働く方の中には、年収106万円を意識しながら働いていた方が多くいらっしゃいました。
これは、一定の条件を満たす短時間労働者が、勤務先で健康保険や厚生年金保険に加入する目安として意識されていたものです。
実際には、単に年収だけで決まるものではありません。
週の所定労働時間、月額賃金、勤務期間、学生かどうか、勤務先の規模など、複数の要件を見て判断されてきました。
ただ、一般的には「年収106万円を超えると社会保険に入る可能性がある」と受け止められ、「働き控え」の原因の一つになっていました。
社会保険に加入すると、健康保険料や厚生年金保険料を負担することになります。
そのため、収入が少し増えても、保険料の負担によって手取りが減ったように感じることがあります。
これが、いわゆる「年収の壁」と呼ばれる問題です。
今後、賃金要件や企業規模要件の見直しにより、短時間労働者の社会保険加入はさらに広がっていくことになります。
【社会保険に加入すると障害年金は止まるのか】
障害年金を受けている方が特に気にされるのは、「社会保険に加入したら障害年金が止まるのか」という点です。
結論から言うと、社会保険に加入しただけで、直ちに障害年金が止まるわけではありません。
障害年金は、病気や障害によって日常生活や就労にどの程度の制限があるかを見て判断される制度です。
そのため、働いているかどうかだけで決まるものではありません。
ただし、働き方は障害状態を判断するうえで大切な要素の一つになります。
どのような仕事をしているのか。
勤務時間はどのくらいか。
職場でどのような配慮を受けているのか。
欠勤や早退はあるのか。
仕事から帰った後や休日の生活はどうなっているのか。
ご家族や支援者の助けがどの程度あるのか。
こうした点を総合的に見ていく必要があります。
つまり、「社会保険に入ったから止まる」のではなく、「働き方や生活状況から見て、障害状態がどのように評価されるか」が大切なのです。
【働けることは、とても大切なことです】
障害年金のご相談を受けていると、「働いたら年金が止まるのではないか」と不安になり、働くこと自体をためらってしまう方がいらっしゃいます。
そのお気持ちはよくわかります。
障害年金は、生活を支える大切な収入です。
もし止まってしまったら生活できないかもしれない。
そう思うと、働き方を変えることに慎重になるのは自然なことです。
一方で、働くことには、お金以外の意味もあります。
社会とつながること。
自分の役割を感じること。
生活リズムを整えること。
自信を取り戻すこと。
将来の選択肢を広げること。
障害年金と就労は、必ずしも対立するものではありません。
むしろ、障害年金があるからこそ、無理をしすぎず、自分に合った働き方を選べる場合もあります。
短時間勤務から始める。
障害者雇用で配慮を受けながら働く。
在宅勤務や柔軟な勤務形態を選ぶ。
体調に合わせて働き方を調整する。
このように、障害年金を生活の土台にしながら、働き方を考えることも大切です。
【社会保険加入にはメリットもあります】
社会保険に加入すると、保険料負担が発生します。
そのため、どうしても「手取りが減る」という面に目が向きやすくなります。
しかし、社会保険加入にはメリットもあります。
たとえば、厚生年金に加入することで、将来の老齢厚生年金につながる可能性があります。
また、健康保険に加入することで、傷病手当金などの制度を利用できる場合もあります。
また、年齢、働き方、障害年金の種類、家族構成、今後の見通しによって、考えるべきことは変わります。
大切なのは、「保険料が引かれるから損」とすぐに判断しないことです。
手取りだけでなく、将来の保障や、万が一働けなくなったときの制度も含めて考える必要があります。
障害年金を受けている方の場合は、現在の生活を守ることと、将来の保障をどう考えるかの両方が大切になります。
【働き方を変えるときに確認したいこと】
106万円の壁撤廃により、これまでよりも社会保険加入を意識する場面が増えていくと思います。
障害年金を受けている方が働き方を変えるときには、いくつか確認しておきたいことがあります。
まず、勤務時間や仕事内容が体調に合っているかどうかです。
収入を増やしたいと思っても、無理をして体調を崩してしまっては、生活全体が不安定になってしまいます。
次に、職場で配慮を受けられるかどうかです。
通院への配慮、勤務時間の調整、業務内容の限定、休憩の取り方、相談できる担当者の有無などは、働き続けるうえで大切です。
また、働いた後の日常生活も確認が必要です。
仕事は何とかできていても、帰宅後に何もできなくなる。
休日は寝込んでしまう。
家事や通院、金銭管理ができなくなる。
このような場合には、就労だけを見て「働けている」と判断することはできません。
障害年金の更新がある方は、働き方だけでなく、日常生活全体の状態を整理しておくことが大切です。
【障害年金と働き方はセットで考える時代へ】
これからは、年収の壁や社会保険加入の見直しによって、短時間で働く方の働き方も少しずつ変わっていくと思います。
障害年金を受けている方にとっても、「働くか、働かないか」だけではなく、「どのように働くか」がますます大切になります。
無理をして働きすぎる必要はありません。
反対に、障害年金を受けているから働いてはいけないということでもありません。
大切なのは、ご本人の体調、生活状況、職場の配慮、家族の支援、将来の生活設計を合わせて考えることです。
障害年金は、その方が自分らしく生活するための土台の一つです。
社会保険加入も、将来の保障を考えるうえで大切な制度です。
どちらか一方だけを見るのではなく、今の生活とこれからの暮らしを見据えて考えることが必要です。
「働く時間を増やしたいけれど不安」
「社会保険に加入すると障害年金に影響があるのか知りたい」
「障害者雇用で働く予定だが、年金との関係を整理したい」
そのように感じている方は、一人で判断せず、早めに相談していただければと思います。
制度を正しく知ることで、不安が少し軽くなることがあります。
そして、ご本人に合った働き方を考えることが、これからの生活を支える大切な一歩になると思います。
【こちらのページも参考に】https://syougainenkin.com/lp/01/
社会保険労務士/CFP・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
石井 要美
2026/09/25
- 障害年金社労士ブログ

