





適応障害でも障害年金は受給できる?初診日と請求の考え方を社労士が解説
本日は、適応障害でも障害年金が受給できるのかというテーマでお話ししたいと思います。
4月から新生活が始まった方もいらっしゃると思います。
同じ職場であっても部署が異動になったり、新しい方が入ってきたりして、なんだか落ち着かない。そんな時期は、誰にとっても少なからずあるものではないでしょうか。
けれど、その変化の中で心や体に大きな負担がかかり、新しい環境になじめず、適応障害を発症してしまうことがあります。
実際に、適応障害をきっかけに就労が難しくなり、休職をしたり、やむを得ず退職に至ったりする方もいらっしゃいます。
もちろん、療養によって改善することが何より望ましいことです。
復職や再就職ができれば、経済的にも気持ちの面でも助かることは多いと思います。
ただ、現実には、思うように回復せず、かえって状態が悪化してしまうこともあります。
当初は適応障害と診断されていたものの、その後うつ病と診断されるケースもあります。
こうした流れを、今回は障害年金の観点から整理してみたいと思います。
適応障害だけで障害年金は請求できるのか
まず、多くの方が最初に気にされるのが、「適応障害の診断で障害年金を請求できるのか」という点です。
適応障害という診断名のみでは、原則として障害年金の請求は難しいことが多いです。
ですから、適応障害と診断されたから直ちに障害年金を受けられる、というものではありません。
ここは、相談の現場でも誤解が多いところです。
仕事ができないほどつらい状態なのに、なぜ対象にならないのかと感じる方もいらっしゃると思います。
そのお気持ちはもっともです。
ただ、障害年金では、単に「つらい」「働けない」ということだけでなく、どのような傷病として整理されるのか、初診日をどう考えるのか、障害認定日がいつになるのか、といった点が非常に重要になります。
適応障害からうつ病に変わったとき、初診日はいつになるのか
次に問題になるのが、当初は適応障害だったけれど、その後、うつ病と診断された場合、障害年金の初診日はいつになるのかという点です。
障害年金における初診日とは、障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日をいいます。
この初診日がいつになるかによって、その日から起算する障害認定日も変わってきます。
つまり、初診日の整理を誤ると、いつの時点の診断書が必要なのかが変わってしまうのです。
たとえば、最初は内科にかかっていたケース
ここで、実際によくあるのが次のような流れです。
最初は、不眠や食欲不振、体重減少などの症状があり、内科を受診していた。
その後もなかなか改善せず、心療内科を受診してみたところ、適応障害と診断された。
さらに時間がたち、うつ病と診断されるようになった。
このようなケースでは、初診日がいつになるのかを慎重に整理する必要があります。
「精神科や心療内科に初めて行った日が初診日なのでは」と思われる方は多いのですが、障害年金では必ずしもそうとは限りません。
そのため、最初の内科受診の経過によっては、その内科受診日が初診日として扱われることもあります。
初診日が変われば、障害認定日も変わります。
そうなると、せっかく診断書を取得しても、その診断書が求められている時期のものではなくなってしまい、取り直しになることもあります。
これは実務上、本当によくあることです。
初診日の整理は、本当に奥が深いです
私は過去に、精神障害の初診日を耳鼻科で認定されたケースも経験しています。
一見すると、精神の障害と耳鼻科は結びつかないように感じるかもしれません。
けれど、実際には、最初に現れていた症状や受診の経緯を丁寧に追っていくと、そこが初診日として評価されることがあります。
障害年金って、本当に奥が深い。
この仕事をしていると、制度は一見シンプルに見えても、実際の事案では一つとして同じものがありません。
だからこそ、私はやりがいを強く感じているのかもしれません。
適応障害のあとに障害年金を考えるときに大切なこと
適応障害と診断されている方の中には、その後しっかり休養を取ることで回復される方も多くいらっしゃいます。
それはとても望ましいことです。
一方で、思うように回復せず、うつ病など別の傷病名で継続的な治療が必要になることもあります。
そのような場合に大切なのは、「今の傷病名だけ」で判断しないことです。
どの医療機関に、いつ、どのような症状で受診したのか。
最初に出ていた症状は何だったのか。
その症状と今の状態はどのようにつながっているのか。
こうしたことを整理しないまま進めてしまうと、本来受けられるはずの障害年金でも、請求の時期や診断書の取り方を誤ってしまうことがあります。
障害年金は、単に傷病名だけを見る制度ではありません。
初診日、障害認定日、症状の経過、診断書の時期、日常生活や就労の状況など、さまざまな要素を丁寧に見ていく必要があります。
適応障害から始まったケースは、特にその整理が重要になることが多いと感じています。
気になる方は、早めにご相談ください
適応障害そのものでは障害年金の請求が難しいことが多い一方で、その後の経過によっては、障害年金を検討する余地が出てくることがあります。
ただし、その場合でも、初診日の整理を誤ると、障害認定日の考え方や必要な診断書の時期がずれてしまいます。
だからこそ、気になる方は、できるだけ早めに相談していただきたいと思います。
「まだ請求できるかわからないから相談するのは早いのでは」と思われる方もいらっしゃいますが、むしろ、整理が必要なケースほど早めの確認が大切です。
一人で悩みながら進めるよりも、全体像を整理したうえで、今は何を見ておくべきかを確認しておくことには大きな意味があります。
社会保険労務士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士 石井 要美
2026/05/04
- 障害年金社労士ブログ

