





人工関節で障害年金はもらえる?接骨院を受診した日は初診日になるのか
股関節や膝関節などの痛みが続き、最初は「少し無理をしただけかもしれない」「年齢的なものかもしれない」と思いながら、接骨院や整骨院に通われる方は少なくありません。
実際、病院に行くほどではないと思っていた痛みが、だんだん強くなり、歩くことや立ち上がることがつらくなってから整形外科を受診されるケースも多くあります。
今回ご紹介するのは、変形性股関節症により人工関節置換術を受け、障害厚生年金3級が決定した52歳女性の事例です。
この事例で大きなポイントとなったのは、「最初に接骨院へ通っていた場合、その日は障害年金の初診日になるのか」という点でした。
障害年金では、どの病気でどの程度の障害があるかだけでなく、「初診日」が非常に重要になります。
特に人工関節の場合、原則として障害等級3級に該当しますが、3級は障害厚生年金にしかありません。そのため、初診日に厚生年金に加入していたかどうかが、受給できるかどうかを大きく左右します。
【股関節の痛みから始まったご相談】
ご相談者は52歳の女性でした。
最初に異変を感じたのは、股関節の痛みでした。歩いているときや立ち上がるときに違和感があり、しばらくすると痛みが強くなっていきました。
ただ、最初から病院を受診したわけではありません。
「筋肉や関節を少し痛めただけかもしれない」
「近所で通いやすいところに、まず相談してみよう」
そう考え、自宅近くの接骨院に通い始めました。
接骨院では、柔道整復師による施術を定期的に受けていました。しばらく通ってみたものの、痛みは大きく改善せず、日常生活にも支障が出るようになっていきました。
そこで、改めて自宅近くの整形外科を受診することになりました。
整形外科で検査を受けたところ、変形性股関節症と診断されました。
当初は、鎮痛剤などの処方を受けながら様子を見ていました。しかし、痛みは徐々に強くなり、やがて歩行そのものが困難な状態になっていきました。
その後、専門の医療機関を紹介され、人工関節置換術を受けることになりました。
【人工関節にしたら障害年金の対象になるのか】
手術後の経過は良好でした。
ご相談者は、手術前の激しい痛みから解放され、杖がなくても歩ける状態まで回復されました。
そのため、ご本人としては、
「今は歩けるようになっているのに、障害年金の対象になるのでしょうか」
「手術をして良くなったのだから、障害とは見てもらえないのではないでしょうか」
という不安をお持ちでした。
このように、人工関節置換術を受けた方の中には、手術によって痛みが軽くなったり、歩行状態が改善したりするため、「自分は障害年金の対象ではない」と思い込んでいる方が少なくありません。
しかし、障害年金の認定基準では、人工関節をそう入置換した場合、原則として障害等級3級と認定するとされています。
つまり、「今、杖なしで歩けるかどうか」だけで判断されるわけではありません。
人工関節をそう入置換したという事実そのものが、障害年金の認定上、重要な意味を持つのです。
もちろん、すべての方が必ず受給できるという意味ではありません。障害年金には、初診日、保険料納付要件、障害状態など、いくつかの要件があります。
ただ、人工関節置換術を受けた方については、「歩けるようになったから障害年金は無理」と最初からあきらめる必要はありません。
【障害等級3級は障害厚生年金のみ】
ここで注意したいのが、障害等級3級の位置づけです。
障害年金には、大きく分けて障害基礎年金と障害厚生年金があります。
障害基礎年金は1級と2級のみです。3級はありません。
一方、障害厚生年金には1級、2級、3級があり、さらに一定の場合には障害手当金という一時金の制度もあります。
人工関節をそう入置換した場合、原則として3級と認定されます。そのため、初診日に厚生年金に加入していた方であることが、非常に重要になります。
今回のご相談者の場合、股関節の痛みで初めて整形外科を受診した日に厚生年金に加入していました。
そのため、障害厚生年金3級の請求が可能となりました。
もし初診日に国民年金に加入であった場合、原則として3級に該当する人工関節を挿入置換しているという状態のみでは、障害基礎年金の対象にはなりません。
ここが、人工関節の障害年金請求でとても大切なポイントです。
【接骨院を受診した日は初診日になるのか】
今回の事例で特に確認が必要だったのが、「接骨院に通い始めた日を初診日と考えるのか」という点でした。
障害年金でいう初診日とは、障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日のことをいいます。
接骨院や整骨院で施術を行う柔道整復師は、医師ではありません。
そのため、接骨院で施術を受けた日そのものは、原則として障害年金の初診日にはなりません。
今回のケースでは、股関節の痛みで最初に整形外科を受診した日が初診日となりました。
ただし、接骨院への通院歴がまったく意味を持たないわけではありません。
接骨院に通っていた記録は、「いつ頃から痛みがあったのか」「どのような症状で困っていたのか」「整形外科を受診する前にどのような経過があったのか」を説明する資料になることがあります。
障害年金の請求では、病歴・就労状況等申立書に発病から現在までの経過を記載します。
その際、接骨院に通っていた時期や、その後に整形外科を受診した流れを整理しておくことで、症状の経過をより自然に説明することができます。
大切なのは、「接骨院に行った日が初診日になる」と誤解しないことです。
初診日は、あくまで医師の診療を初めて受けた日を基本として確認していきます。
【初診日が変わると結果が変わることがある】
障害年金では、初診日がとても重要です。
なぜなら、初診日によって確認される内容が変わるからです。
まず、初診日にどの年金制度に加入していたかを確認します。
厚生年金に加入していたのか、国民年金だったのか、20歳前だったのかなどによって、請求できる年金の種類が変わります。
次に、保険料の納付要件を満たしているかを確認します。
つまり、障害年金では「今の状態」だけでなく、「最初に医師の診療を受けた日」が制度上の出発点になるのです。
今回のように人工関節で3級に該当する場合、初診日に厚生年金に加入していたかどうかが特に重要です。
仮に、接骨院に通い始めた日を初診日と誤って考えてしまうと、年金加入状況の確認もずれてしまう可能性があります。
また、初診日の証明書類をどこに依頼すればよいのかも変わってきます。
障害年金の請求では、初診日の整理を丁寧に行うことが、請求全体の土台になります。
【人工骨頭の場合も3級に該当することがあります】
人工関節と似たケースとして、人工骨頭をそう入置換している場合があります。
たとえば、大腿骨頭壊死症や大腿骨頸部骨折などにより、人工骨頭置換術を受ける方もいらっしゃいます。
障害年金の認定基準では、人工骨頭をそう入置換した場合も、人工関節と同様に、原則として障害等級3級と認定されます。
そのため、変形性股関節症だけでなく、大腿骨頭壊死症などで人工骨頭を入れた方も、障害年金の対象になる可能性があります。
ただし、この場合も、3級は障害厚生年金のみです。
初診日に厚生年金に加入していたかどうか、保険料納付要件を満たしているかどうかを確認する必要があります。
病名だけを見て判断するのではなく、手術内容、初診日、年金加入状況をあわせて確認することが大切です。
【人工関節でも上位等級になることはあるのか】
人工関節や人工骨頭をそう入置換した場合、原則として3級と認定されます。
では、人工関節の場合は必ず3級で、それ以上の等級にはならないのでしょうか。
そうとは限りません。
人工関節や人工骨頭をそう入置換してもなお、障害の状態が重く残っている場合には、さらに上位等級に認定される可能性があります。
たとえば、手術後も可動域制限が残っている場合、筋力低下の状態、両足に大きな障害がある場合、日常生活に大きな支障が続いている場合などは、個別の状態を丁寧に確認する必要があります。
診断書に記載される関節の可動域、筋力、歩行状態、補助具の使用状況、日常生活動作の制限などを総合的に見て判断されます。
そのため、医師に診断書を依頼する際には、現在の生活上の困りごとを具体的に伝えることも大切です。
【今回の請求で大切にしたこと】
今回の請求では、まず初診日の整理を丁寧に行いました。
接骨院への通院歴はありましたが、障害年金上の初診日は、股関節の痛みについて初めて整形外科を受診した日として整理しました。
そのうえで、初診日に厚生年金に加入していたこと、保険料納付要件を満たしていること、人工関節置換術を受けていることを確認しました。
人工関節の場合、手術を受けた事実が重要である一方で、そこに至るまでの経過をわかりやすく伝えることも大切です。
結果として、ご相談者は障害厚生年金3級として認定されました。
【人工関節だからこそ初診日の確認が大切です】
人工関節置換術を受けた方の中には、手術後に痛みが軽くなり、歩けるようになったことで、「障害年金は関係ない」と思ってしまう方がいらっしゃいます。
しかし、障害年金の認定基準では、人工関節をそう入置換した場合、原則として3級と認定されます。
一方で、3級は障害厚生年金にしかありません。
そのため、初診日に厚生年金に加入していたかどうかが、受給の可否に大きく関わります。
そして、今回のように、最初に接骨院へ通っていた場合には、「接骨院に行った日が初診日なのか」「整形外科を受診した日が初診日なのか」という点で迷いやすくなります。
接骨院での施術日は、原則として障害年金の初診日にはなりません。
人工関節や人工骨頭をそう入置換している方は、「今は歩けるから無理」と決めつけず、まずは初診日と年金加入状況を確認してみることが大切です。
障害年金は、単に病名や手術名だけで判断されるものではありません。
その方がどのような経過をたどり、どの時点で医療機関を受診し、どの制度に加入していたのかを丁寧に整理していくことで、受給につながる可能性があります。
【こちらのページもご参考まで】https://syougainenkin.com/lp/01/
社会保険労務士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
石井 要美
2026/05/25
- 障害年金社労士ブログ

